脂肪吸引

脂肪吸引は、皮下脂肪の除去により、希望するシェイプラインを実現する手術法です。

皮下脂肪は、筋肉と皮膚のあいだに蓄積していきます。内臓脂肪は運動により効率良く燃焼されますが、皮下脂肪は内臓脂肪に比べて、なかなか運動や食事で減らすことが難しく、また、リバウンドしやすいことが知られています。脂肪吸引により、この皮下脂肪を、直接的に取り除くことができます。

 

脂肪吸引では、数mmの小さな穴(カニューレ孔)から、筋肉、神経、血管などの重要な組織を傷つけずに、皮下脂肪だけを取り除きます。カニューレ孔は非常に小さく、目立たない部位から吸引するので、手術をおこなったことがキズあとから他の人に分かることはありません。

 

脂肪吸引の施術前におこなうべき検査と診察

脂肪吸引は皮下脂肪に対する治療法ですから、内臓脂肪型肥満や、筋肉によるかたちの変化(例えば腹直筋離開や白線ヘルニアなど)、皮膚のたるみ(Massive weight loss:高度のダイエット後の余剰皮膚)などには効果がありません。

脂肪吸引が有効な治療法か、また、安全に治療ができるかの確認のために、以下のような術前検査が必要です。

  • 血液検査
  • 体組成検査(体脂肪率と筋肉量の検査)
  • 脂肪厚検査(ピンチ・テスト)
  • CT検査

これらの検査から、脂肪吸引以外の治療が有効な場合には、メディカル・ダイエット・サポートや腹壁形成術などの別の治療を検討することもあります。

 

脂肪吸引をおこなう前に、立った状態で、脂肪吸引をおこなう範囲、深さなどを綿密に計画し、体表に書き込む作業をおこないます。これを「術前デザイン」と呼び、手術の設計図になる重要な作業です。

 

脂肪吸引では体型のメリハリがある理想的な体型ををつくるためには、その下にある筋肉の走行を熟知し、ひとりひとり違う皮下脂肪の厚み・皮膚の緊張度を的確に把握する必要があります。どこの脂肪をどれくらい減らすか、どこの脂肪を取ると体型がたるんでしまうのかなど、気をつけなければいけないことが数多くあります。脂肪吸引は「ただ脂肪を吸いとる単純作業」ではなく、「理想のかたちを掘り出す芸術的な彫刻」です。

このため、脂肪吸引には解剖学・生理学などの医学的知識と、豊富な経験、美的なセンスという、高度なスキルが要求されます。

 

脂肪吸引の実際と術後の経過

全身麻酔により苦痛を感じない状態で手術をおこないます。

痛みをなくし、脂肪細胞を吸引しやすくするために、チュメッセント麻酔という局所麻酔法も併用します。

 

2〜4mmほどの小さな穴(カニューレ)から脂肪吸引カニューレを用いて、脂肪細胞だけを吸引、除去していきます。手術に必要な時間は範囲によりますが、通常1〜数時間です。

 

小範囲の脂肪吸引では痛みはほとんどありません。広範囲の脂肪吸引の場合には、筋肉痛のような鈍痛を感じることがあります。切り傷のような鋭い痛みはありません。鈍痛は鎮痛剤で抑えられる程度の痛みですが、この痛みも通常は1〜2週間で消失します。

 

術後の安静期間、回復期間も、脂肪吸引の範囲と部位によって多少の違いがあります。通常、手術の翌日から日常生活やデスクワークなどには制限はありません。激しい労働や運動などは2〜4週間で再開可能です。

腫れや内出血が消失するのには1〜数ヶ月かかります。また、脂肪吸引した周囲の組織は、しばらく硬くなる変化を起こします。この一時的な変化が安定し、脂肪吸引後の最終的な形態を確認できるようになるのにも数ヶ月必要です。

 

吸引した脂肪細胞の利用価値

脂肪吸引により採取した脂肪は、その中から状態のよい脂肪細胞を選別して、脂肪注入治療に用いることができます。

脂肪注入は、以下のような治療に使用されます。

  • 乳房再建
  • 豊胸
  • その他のボディーコンツールの治療(殿部をふくよかにする、胸の上部のボリュームを作る、筋肉を強調した体型にする、など)
  • 顔面のアンチエイジングや美容治療(シワやたるみ、目の上のくぼみ、目の下のクマの治療、など)
  • ボリュームが減少している疾患や変形

 

また、脂肪組織の中には、通常の脂肪細胞(成熟脂肪細胞)のほかに、ごくわずかに「脂肪組織由来幹細胞(Adipose Derived Stem Cells; ADSCs)という細胞が含まれています。この脂肪組織由来幹細胞は、脂肪以外に筋肉、神経、血管、骨、軟骨、一部の臓器などの多様な細胞になる能力を持っています。また、サイトカインという生理活性物質を分泌し、周囲の組織にさまざまな影響を与えます。

これらの性質を利用して、脂肪組織由来幹細胞を注入する再生医療が、「脂肪幹細胞移植」です。

脂肪幹細胞移植は、さまざまな目的でおこなわれますが、代表的な例としては以下のような治療に使用されます。

  • 血管の再生治療(糖尿病などによる下肢の虚血など)
  • 慢性創傷の治療(治りにくい潰瘍などに対する治療)
  • 瘢痕拘縮に対する治療
  • 腹圧性尿失禁に対する治療
  • 神経再生治療
  • 乳房再建
  • 顔面のアンチエイジングや美容治療

 

 

治療にともなうリスクとベネフィット

乳房縮小術にともなって起こりうるリスクとしては、次のような合併症が考えられます。

  • 一時的な皮下出血
  • 腫れ
  • しびれ
  • 痛み
  • 色調変化(色素沈着/脱出)
  • 皮膚の波打ち
  • 皮膚損傷

 

また、この治療を受けることにより得られるベネフィットは、皮下脂肪減少によるボディーシェープ改善の永続的な効果、日常生活におけるQOLの向上が挙げられます。

 

国際美容外科学会による脂肪吸引の解説

https://www.isaps.org/jp/%E6%89%8B%E6%8A%80/%E8%84%82%E8%82%AA%E5%90%B8%E5%BC%95